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[ RESEARCH Aim]

ハイブリッド霊長類言語学の創成

言語進化を駆動する「コミュニケーションの多様化」と「ハイブリッドゾーン」

人間社会では多様な個性や発達特性をもつ者同士の交流が常であり、我々は常時『ハイブリッドゾーン(異なる種や社会構造をもつ集団同士が接触する領域)』で会話していると捉えることができます。

本領域は「ヒトの対話は常にハイブリッドゾーンである」という挑戦的仮説を提案し、ハイブリッドゾーンにおけるコミュニケーション変容を言語進化のモデルと捉え、コミュニケーションの多様化をもたらす要素をヒトとサルの比較を通じて探索します。特に、異言語接触により生じる混成言語(ピジン)をモデルとし、ヒトやサルにおける他者・異集団・異種間のコミュニケーションを研究することで、霊長類学や神経科学との連続性の中で実験科学的手法により言語学を扱うことを試みます。

複雑かつ多様な
コミュニケーションはどのようにして生まれたのか?

本研究領域では、特にコミュニケーションにおける「寛容性」に着目し、異言語接触に伴う変化の受容を可能にする神経基盤が多義的なヒト言語の成立を支えたとする「寛容性言語回路仮説」を検証します。

霊長類の他個体との交流における“寛容性”の 神経基盤の解明

脳神経科学班では、飼育下のサルに対してプレイバック実験(他個体が発する音声を再生しながら色々なサルの表情を提示する実験)を施した際の行動がどのように変わるかを調べます。さらに、ヒトfMRI研究で言語機能と寛容性に関わることが示唆されている前部帯状皮質(ACC)の神経活動を遺伝学的手法で操作し、寛容性が変化した個体に対してプレイバック実験を施した際の行動がどのように変わるかを実験します。ACCは大脳辺縁系に分類される皮質領野で、脳深部の情動に関わる領域(扁桃体)や発声に関わる領域(中脳水道周囲灰白質)などと強い神経結合をもっています。これまで言語脳科学でコミュニケーションのキープレイヤーと考えられてきた中核言語領域(左半球側頭葉等)以外が主役となる新しいコミュニケーション中枢モデル(寛容性言語回路仮説)の提案に挑戦します。

#脳神経科学 #寛容性 #音声解析 #言語脳進化 #コミュニケーション

図1.png
霊長類における社会の寛容性が音声の多義性や曖昧的運用に与える影響の解明

野外霊長類学班では、主に霊長類を対象として、社会構造(社会性や寛容性)や個体間関係の違い、他種の音声との接触を軸とした野外調査を展開し、ヒト言語に至るコミュニケーションの複雑さを生み出す原動力の解明を目指します。

野外行動観察と実験的手法を統合するという独自のアプローチを通じて、実験室研究の制約と野外研究の可観測性の限界を相互に補完する枠組みを構築し、動物社会における意味の生成プロセスの全体像に迫ります。

#霊長類学 #社会生態学 #音声解析 #コミュニケーション #進化生物学

言語運用方略と寛容性の言語研究

言語班では、選好するコミュニケーション方略が個人の寛容性に応じて異なり、その均衡によって相互理解が成立するコミュニケーションが実現されるという仮説を、ヒト対象の行動実験・発話データ解析・脳機能実験と多面的手法を用いて検証します。定型発達の方に加えて、自閉スペクトラム症のある方を含む神経発達の多様性にも目を向けながら、言語の使い方や寛容性の個人差がどのように関係するのかを明らかにします。得られた知見について、脳科学班の神経回路操作実験・サル班の社会構造とコミュニケーション形態の関係についての知見と対比し、ヒト言語の多義性・曖昧性の生物学的メカニズム解明を目指します。成果を発信することで、多様な特性をもつ人々の相互理解につながることが期待されます。

#言語学 #コミュニケーション #寛容性 #多義性・曖昧性 #神経発達特性

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